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Jリーグ 8年前

最下位転落も貫く「湘南スタイル」。次のステップに向け、監督と経営者が共有するビジョン

湘南ベルマーレがもがき苦しんでいる。17日のアビスパ福岡戦で0-2の完敗を喫し、連敗は泥沼の「10」にまで伸びた。セカンドステージだけでなく年間総合順位でも最下位に転落したなかで、曹貴裁監督はクラブのDNAでもある「湘南スタイル」を貫くと力を込め、眞壁潔代表取締役会長は経営規模を拡大させていくことへの決意を新たにする。土壇場に追い込まれたベルマーレの現在位置を追った。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

戦術とは別次元にある「湘南スタイル」の定義

湘南ベルマーレを率いる曹貴裁監督
湘南ベルマーレを率いる曹貴裁監督【写真:Getty Images】

 湘南ベルマーレの戦いぶりを介して、日本サッカー界のなかでかなり浸透した感のある「湘南スタイル」という言葉の定義を、あらためて噛みしめてみたい。

 起源はベルマーレがJ2を戦っていた2012シーズン。ある試合後の公式会見で、このシーズンから指揮を執っていた曹貴裁監督が「我々の湘南スタイル」という言葉を残したこととされている。

 攻守を素早く切り替える、攻守両面で常に数的優位を作る、縦パスが占める割合を40パーセント前後にする――といった戦術的な特徴はあるが、真の定義はこれらとはまったく別の次元にある。

 昨年2月に発表した初めての著書『指揮官の流儀 直球リーダー論』(角川学芸出版刊)の冒頭部分で、曹監督は「湘南スタイル」の定義をこう著している。

「スタンドとピッチが同じ気持ちを共有しながら、スタジアム全体に『これが湘南のサッカーなんだ』と胸を張れる空間を作り出すこと」

 代名詞としてよく結びつけられるカウンターは、ファンやサポーターとベルマーレというチームが、同じ価値観のもとで心を躍らすことのできる代表的なプレーのひとつにすぎない。

 2度目のJ1を戦っていた昨シーズンの途中には、トップカテゴリーで確固たる結果を残してきたチームに苦杯をなめるたびに、指揮官はこんな言葉を残してはチームの原点を確認している。

「90分間を通して足を止めない。両方のゴール前で体を張る。1回でボールを奪えなかったら2回、3回と何度でもいく。1回で相手を崩せなかったら2人、3人と人数をかけて攻める」

 あるいは、対戦相手や状況によっては引いて守ることも必要なのでは、と指摘されたときには未来を見すえながら、覚悟を込めた毅然とした表情でこう持論を唱えたこともある。

「『絶対』というものがないと勝負することはできない。次の試合へ向けて違ったことをするようでは、チームに『絶対』は残らない。僕は『絶対』というものを譲りたくないし、選手たちに『絶対』を実践させたうえで勝たせてあげたいし、勝ってもらいたい」

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