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久保建英を“日本のメッシ”と煽る危険性。天才少年苦しめたサッカー史最大の“奇跡”との比較

text by 山本美智子 photo by Hiroyuki Sato , Rafa Huerta , Getty Images

毎日の痛みに耐えたメッシ。突然スターになるわけではない

リオネル・メッシ
メッシほど高いレベルで長期間に渡り、プレーし続けることができた選手はいない【写真:Getty Images】

 世界のサッカーは歴史を通して、多くのスター選手を排出してきた。ペレ、ディエゴ・マラドーナ、アルフレド・ディ・ステファノ、ベッケンバウアー、ヨハン・クライフ……。90年代以降の選手も含めたらキリがない。

 だが、そういったあらゆる時代を越えて、レオ・メッシほど高いレベルで長期間に渡り、プレーし続けることができた選手はいない。それも、彼はフィジカル的に恵まれていたとは言えない。本人は進んでは話したがらないが、少年時代に成長障がいを抱えていたことは今では周知の事実として知られている。

 彼の才能は幼少からずば抜けていたが、その治療費は膨大であった。いくら才能があっても多額の治療費がかかり、フィジカル的にも恵まれていない小柄な14歳の少年に投資するクラブは当時なかった。唯一、その才能に賭けて全治療費を支払うと提示したのがFCバルセロナだったのだ。

 成功した今となっては、困難を克服した美談としてまことしやかに語られているが、その辛酸は想像するに余りある。今の久保くんの年齢、15歳の頃メッシは、故郷から離れてバルセロナで練習を積みながら、毎日自分の足に成長ホルモンを打っていた。

 メッシの代理人であり父親であるホルヘ・メッシの口から、私は直接その話を聞いた。「誰かが打ってやることもできたが、私はレオに言ったんだ。毎日、自分で打ちなさい。本当にプロとして成功したいなら、人に頼らずにこの痛みに耐えなければならない。彼はそれに耐え続けたんだ」と。

 もちろんこれは一例に過ぎず、メッシの偉大さを語れば一冊の本ができあがってしまう。だがどんなに才能ある選手も、ある日突然スターダムに上り詰めるわけではない。そして、そのスターダムに上り詰めるためにも才能が必要になる。

 一つの心に留めておきたい例をあげよう。この世界一の選手、レオ・メッシをユースレベルで超えた選手がいたのだ。

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