“球離れの良さ”はどのようにデータ化できるか?
このように言葉で踏み込むこともあれば、映像で踏み込むこともある。パス成功率に加えて、その選手のパスが成功した場所としてない場所の映像を3分程度にまとめて見せるのだ。「ここからパスをしたときは通るけど、ここからは通らないよね」といった具合に、ビデオを見る選手に響くように、データを読み解いて提示するのである。
そして「Prozone(プロゾーン)は、30枚の分析レポートを出すために必要なデータを、一目見ただけでチームの特徴が分かるレーダーに表出する「Playing Style(プレーイングスタイル)」というソフトウェアに昇華させた。プロゾーンならではの「データの見える化」=「データに意味を持たせる」アプローチだ。
レーダーの角は、ポゼッション、ダイレクトプレー、カウンターアタック、ファスト・テンポといったプロゾーンが定義した項目に分かれている。そしてまた、1つひとつの項目に先に記したような“まとめのビデオ”が付随されることになる。
2014年のブラジルW杯でベスト8に進出したチームを例に、ファスト・テンポ(fast tempo)を見てみる。ファスト・テンポとは、選手1人ひとりのボール保持時間の長さのことだ。ワンタッチ、ツータッチで回しているかどうか、要するに“球離れの良さ”を表すものである。
「ドイツ代表は2006年頃から、ファスト・テンポの短縮にずーっと取り組み始めたんですよ。各個人が、ボール保持時間を2秒から、さらにちょっと短くしてみよう、とか。そこでプレーイングスタイルのレーダーを見てみると、確かにドイツ代表はボールを貰って、ポンポン回していることが分かりますよね。スペイン代表は、ポゼッションと言われているけれど、ワンタッチ、ツータッチですぐ叩いていることも分かります」
スペイン代表の例は「データの見える化」によって、意外な真実が端的に現れたということだろう。一方で、その代表チームに対するイメージをそのまま喚起する場合もある。