“ケーヒル依存症”解決の端緒を見せたイラク戦
実際、豪州と対戦する側にしてみれば、ケーヒルがベンチにいるのは実に不気味で怖い。代表キャリア92試合で48ゴールの決定力を誇る彼が”必殺仕事人”的な役割を担っていることは、心理的な圧迫感として対戦相手に無言のプレッシャーを与える。ポスタコグルー監督もその効果をわかったうえでのケーヒル温存策だったに違いない。
この試合のメンバーは、守護神マシュー・ライアン(バレンシア)。CBにはトレント・セインスベリー(江蘇蘇寧)とチーム随一のユーティリティで監督の信頼が厚いマーク・ミリガン(バニーヤス)。左SBは、スタメンの座を確保したブラッド・スミス(ボーンマス)。そして、相変わらず試合ごとの交替起用が続く右SBには、クロアチア生まれのセルビア人として経験したユーゴ内戦の難民として幼いころに移民としてやってきた、24歳のミロス・デグネク(1860ミュンヘン)が起用された。
注目の中盤には、守備的MFにキャプテンのミレ・ジェディナク(アストン・ヴィラ)、攻撃的なポジションの右に25歳のアーロン・ムーイ(ハダーズフィールド・タウン)、左には23歳のマッシモ・ルオンゴ(QPR)と、イングランドで活躍する2人を起用。そして、トップ下にはセルティックでブレイクした23歳のトム・ロギッチ。前線のツートップには、共に25歳のトミ・ユリッチ(ルツェルン)とマシュー・レッキー(インゴルシュタット04)を並べた。
早くから将来を嘱望され、ポスタコグルー監督が行った世代交代の中で頭角を現してきた若手選手メインで構成される攻撃陣には、サッカルーズの変容と成長の在り様が映し出された。
ケーヒルをベンチに置き、結果が出なければ困るところだったが、この日は若手が攻守に躍動し、まったく危なげなく2-0と勝利。慣れないフォーメーションも、個々の能力の高さもあって特に大きな問題点は見られなかった。
むしろ中盤のキャラクターが揃うことで、攻撃のバリエーションが増えているようにも感じられた。大事な最終予選の初戦で宿痾とも言われた”ケーヒル依存症”の克服の端緒を見せたのだから、上出来だ。