リターンが見えにくい分析への投資。協会を納得させ続けた10年間
顧客の中には、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ、アトレティコ・マドリーといった昨季チャンピオンズリーグのベスト4に進出したクラブの名前がある。他に昨季CLに参加したチームでは、パリ・サンジェルマンなど16のクラブと提携している。
「私たちとしては、ドイツサッカー協会の例もありますから、クラブの方々に対しては、経験に裏付けされたサービスを提供できる自信があります」
7月にポルトガルが優勝したEUROでは、ドイツ代表を始めとして、開催国フランス、イングランド、ウェールズ、オーストリア、スイス、トルコといった各国代表にデータを提供した。
そんな錚々たる顧客群の中でも、ドイツ代表とだけは、チームの中に溶け込んで密接な関係を築き上げている。
「バイエルンなどは全く逆で、データを渡すなど、外部からのコンサルタントです。包括的なサポートはドイツ代表が、今一番密接に関わっています。アドバイザーがチームにまで入っているのは、代表だけですね」
今となっては他社が入り込む余地のないプロゾーンとドイツ代表の関係の、そもそもの始まりは、具体的には定かではない。20年前、前身のマスターコーチ社は、既に分析の分野である程度の地位を確立していた。一方で、2000年のオランダ・ベルギー共催EUROでの惨敗を機に、ドイツサッカー協会が改革を推し進める中、代表の分析部門が立ち上がった。
その時に、外部からプロゾーンの人間を入れようということになったのだという。ドイツ代表の分析部門を立ち上げたクリストファー・クレメンス氏は、前身のマスターコーチ社から引き抜かれた人物だった。そのことが関係しているかは分からないが、いずれにせよ、それ以来プロゾーンはドイツサッカー協会の期待に応え続けている。
「そもそも分析の分野というのは、投資、つまり時間とお金を掛けたときに返って来たものが見えづらい分野だと思うのですが、そこはドイツ代表がしっかりとしたコンセプトを持って10年前から取り組んでいます。
もちろん、こちらに実力、業績がないと向こうも途中で契約を打ち切ってしまうでしょう。ですから、この10年間のプロゾーンの仕事は、ドイツサッカー協会を納得させてきたものだったと自負しています」