日本人コーチ入閣のメリット
昨年3月31日のウズベキスタン代表戦で初キャップを獲得したDF昌子源(鹿島アントラーズ)は、ミーティングで「試合が終わってから相手に謝ればいい。試合中は全員が敵だ」と檄を飛ばされている。激しい言葉に込められた意図を、昌子はこう振り返ったことがある。
「アジアカップなどの映像などを見た監督は『日本には優しさがあった』と言っていた。要は相手に当たることに対してリスペクトしすぎている、優しく当たりにいって逆にひじ打ちを食らっていると指摘されました。常に強気で、そのなかにリスペクトの精神をもてと言われました」
昌子の件はあくまでも一例になるが、外国人にはナイーブに映る日本人選手のメンタルは、日本という国がもつ独特の文化や習慣に起因している。そして、言うまでもなく、それらを最も理解できるのは日本人の指導者となる。実際、JFA内には日本人コーチが必要不可欠だという声が根強くあった。
2年前のブラジル大会を制したドイツ代表のヨアヒム・レーヴ監督をはじめとして、ワールドカップの歴代優勝国の監督はすべて自国の監督が務めている。言語や文化、そして習慣などを共有することが、よりきめ細やかなさい配をふるうことを可能にさせてきた証といっていい。
日本代表が決勝トーナメントに進んだ2度のワールドカップでも、2002年の日韓共催大会は山本氏がコーチとして入閣。2010年の南アフリカ大会は、岡田武史監督以下の首脳陣を日本人で固めていた。
そうした事情もあって、ハリルホジッチ監督もサポート役となる日本人コーチの必要性を感じていたのだろう。8日に東京・文京区のJFAハウスで行われた直接会談の席で、U-23日本代表をまとめあげた手腕を評価され、JFAから復帰を推挙されていた手倉森氏に対して、指揮官自らコーチへの復帰を要請していた。