選手にこそキャプテンシーが求められる
ブラジルフットボール界を取り巻く状況は危機的であると、一体どれだけのブラジル人が感じているのだろうか。今回のコパ・アメリカに出場したフィリペ・ルイス、ダニエウ・アウベス、カゼミーロ、ウィリアン、フィリッペ・コウチーニョといった選手はスペイン、フランス、イングランドとヨーロッパの一流クラブでプレーする選手たちである。しかし一昔前のヨーロッパ組とはあきらかに違っている。以前は、ヨーロッパのどのチームにおいても、ブラジル人選手がナンバーワンの存在だった。しかし彼らはそれぞれのチームでナンバーワンの選手ではない。
コパ・アメリカ・センテナリオでは第1戦、第2戦ともキャプテンはダニエウ・アウベスが務め、そして第3戦には怪我から復帰のミランダが出場し、キャプテンを務めた。しかしいずれも存在感はあまり感じられなかった。ドゥンガが認めるキャプテンシーを本当に持っているのかも疑わしかった。CBFがドゥンガに求めたキャプテンシーは、実は選手の中に求めなければならないことにCBFは気がついただろうか?
ブラジルのマーケティングの問題点を、ドゥンガは監督再就任時に話していたが、クラブは選手を早く現金化するために、促成栽培して、若いうちにヨーロッパへ売ってしまう。ものすごく期待された選手、例えばパトもそうだったが、ヨーロッパへ行き、こぢんまりとした存在で終わってしまう。代表に向けての育成はブラジルフットボール界が抱える一つの問題でもある。
2014年ワールドカップでドイツに大敗したことは、ブラジルフットボール界全体を見直し、そして変わるための大きなきっかけになるはずだった。あるいは今回のドゥンガの解任がきっかけとなり、ブラジルは変わることができるのだろうか。
危惧するのは、仮にオリンピックで金メダルをとったら、安堵してしまい、問題が忘れ去られてしまうことだ。
今回のドゥンガの再就任から解任に至るプロセスをみても、ブラジルフットボール界の改善に向けての動きが、ほとんど見えてこなかったのはたしかだ。
(文:竹澤哲)
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