状態の上がらないマテュイディ
加えて今回の2試合では、マテュイディのコンディションも気になった。イタリア戦では先発して63分までプレーしたが、ベラルーシ戦では出番がなかった。ベラルーシ戦では、システムをイタリア戦の4-3-3から4-2-3-1の2ボランチに変えたため、ポグバ、カンテ、マテュイディのうち1人が外れるのはロジックではあるが、デシャン監督は「よりコンディションの上がっているポグバとカンテを選んだ。不安の残る選手に先発は任せられない」と選考理由を語った。
EURO参戦が長引き、PSGへの合流も遅れたマテュイディは、コンディション調整の理由もあって、エメリ新監督のもとではまだ先発に定着していない。ユベントスへの移籍話などもあり、ピッチ内外で落ち着かない状態にあったことが、彼が試合勘を取り戻せていない要因にもなっている。
マテュイディは、とくにテクニックやビジョンに秀でているというよりは、その無尽蔵のスタミナでボールを追い続けるところに最大の強みがある選手。その彼のフィジカルコンディションが低下すれば、チームにもたらせる利益も下がってしまう。
これまで『絶対スタメン』ともいえたマテュイディの失速。そしてエヴラ卒業後の左サイドバックについても、今回はクルザワを起用したが、ゲームのアクセントになる爆発力や創造性はあるがプレーが安定しない彼と、安定感はあるがひらめきには乏しいディーニュ、タイプの違う2人の間でデシャン監督は試行錯誤することになる。
次の予選は10月7日、ルクセンブルクを破ってグループ首位につけるブルガリアが相手だ。そしてその後はオランダ戦、スウェーデン戦が続く。涙を流したEURO決勝の地、スタッド・ド・フランスに初めて戻るこのブルガリア戦は、レ・ブルーの今後に大きく影響する重大な一戦だ。
ただ、ベラルーシ戦後のアンケートでは、80%が「フランスはW杯予選を勝ち抜けられる」と答えるなど、悲観的なムードはない。悲劇のヒーローが蘇るシナリオを期待する地元サポーターの前で、痛快な勝利をあげたいところだ。
(文:小川由紀子)
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