精神的支柱となれる選手の不在
たしかに、クロスバーに当たったジルーのヘディングやポグバの中距離弾、ジルーとグリーズマンのコンビネーションからのシュートなど、フランスには惜しいチャンスは多々あった。
だが印象としては、とくに後半は得点を挙げようと焦るあまり、もうひと息落ち着いてからシュートに持ち込んだほうが良いかと思われる場面で打ってしまった状況が多かったように思えた。
それでも枠内に10本のシュートを飛ばせるのは彼らの高い技術のなせるところで、その技能をもってすれば、相手をきちんと崩した状態であればゴールを決め切れる可能性もより高まったはずだ。
相手からボールを奪って前に展開するという役割を高いレベルでこなしていたカンテも、「ラインの中でより多くのパスをつなぐことで、もっと相手の型をくずすべきだった」と試合後に語っていたが、勝ちを意識しすぎるとプレーが雑になるというのは、EURO決勝のポルトガル戦でも露呈した今のレ・ブルーの課題でもある。
その点にも影響している、この予選であらためて浮上した現代表の問題は2点だ。ひとつはリーダー不在。経験豊富であり、ハーフタイムにはロッカールームで仲間たちに檄を飛ばしてきたエヴラが去ったことで、その役割をこなす人材がいなくなった。
この試合では、ロリス不在につきCBのヴァランがキャプテンマークを巻いた。彼も、そしてロリスも、強い言葉でチームを引っ張るというよりは、大きな器でチームを見守るタイプの主将だ。
窮地に陥ったとき、こじあけられずにフラストレーションがたまっているとき、経験豊富な選手からの実体験に基づいた激励の言葉というのは、ものすごく励みになるもの。では、これから18年の本戦までに誰かがそのような人材に成長……というのも望めそうにない。性格的に、そういうタイプの選手が現代表にはいないからだ。
いっぽうで、ポグバ、グリーズマン、クルザワら、現代表の半数を占める92年前後のジェネレーションの選手たちは、みな仲が良く、チームの雰囲気は良い。
厳格なリーダーはいないが、みんなの輪で乗り切る!型のチームというのも悪くはないが、EURO決勝で敗れるといった精神的なダメージを負ったこともあり、精神的支柱やリーダー格は欲しいところだ。