現実路線を辿るも公表しない目標値
「講演では『ロマンとソロバン』ということを話しています。やっぱりロマンがなければこういう仕事はできないじゃないですか。しかし、ロマンだけではダメで確固とした経営基盤も必要ということですね。
(中略)これから目標値をつくっていかないといけないですね。例えば、平均入場者数や協賛金、放映権料など。今はお金の部分が先行して進んでいますけど、入場者数などの数値設定もやっていかないといけないと思っています」(13年12月18日、フットボールチャンネル掲載。「【独占インタビュー】大東和美チェアマンが語る、Jリーグが2ステージ制にしなければならない理由」)
大東は、大会方式の変更など改革の成否を検証するための目標値について明言していた。しかし、目標の数値は今になっても周知されていない。
Jリーグは15年シーズンを総括した『J.LEAGUE PUB REPORT 2015』の中で、「大会方式変更とスタジアム改修等により入場者数増加」と結論づけている。年間総入場者数が1000万人を超えたことを「特筆すべきこと」と記しているが、目標との比較がない中でのこの数字に一体どんな意味があるのか甚だ疑問だ。
極端なことを言えば、クラブを増やして、タダ券をばら撒けば入場者数は増加する。到達目標があり、それにかける予算があり、そして出てきた成果を検証するのは事業の基本中の基本のはずだが。
さて、賢明な読者ならば重要な点に気づいたはずである。大東は13年時点で目標値の1つとして放映権について触れている。16年シーズンでスカパー!との契約が切れることを視野に入れての発言と思われる。果たしてどのような目標値があったのかは定かでないが、3年の時を経て放映権は実に大きな意味を持つようになる。
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