プレミア仕様の戦い方を取り入れたペップ
かつてファーガソンはユナイテッドを「バス」に喩えた。
「ユナイテッドは常に前へ進むバスだ。何が起きようと、君たちがいようといまいと、バスは進んでいく」
怪物級の選手たちが乗り込んだバス。そこから降りる人もいるが、お構いなしにバスは進む。選手に合わせて何かをしてくれることはあまり期待できない。やるかやらないかは選手次第、才能は遠慮せず存分に発揮していい。できないならバスを降りるしかない。言い訳無用。ユナイテッドには野武士の集団のような迫力がある。
このバスの運転手としてモウリーニョ監督はうってつけだろう。ペップと違って“凝った”チームは作らない。各ポジションに実力者を配置し、攻守に穴のないチームを作る。オーソドックスだが手堅い。何も特殊なことは要求しないので完成するのも早い。早く出来上がるぶん賞味期限も2年と決まっているが、優勝できるチームを作る。
シティはユナイテッドの猛攻に耐えながら、ときおり鋭いカウンターアタックを披露する。攻めっぱなしの試合が多いので気がつきにくいが、グアルディオラ監督はしっかり守備を仕込んでいたことがわかる。
守備の強いフェルナンドを投入し、デ・ブルイネをトップに上げ、新加入のザネで幅をとる。前半のプレッシングではなく、ブロック守備からカウンターを狙っていた。これに関してはペップのチームらしくはないが、プレミアリーグを勝ち抜くには必要な戦い方だ。
試合は2-1のまま終了、シティが勝利した。ただ、まだシーズンは始まったばかり。これから続く長い物語の始まりにすぎない。シティとユナイテッド、グアルディオラとモウリーニョ……青と赤の相克の歴史は続いていく。
(文:西部謙司)
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