侮れないタイ。仕切り直しできるか
終盤に関しては1点リードしているUAEもより自陣で守備を固める状況で、全体的にリスクを負って攻勢をかけた。だが、「ちょっと単調になってしまったかなという部分はある」と原口元気が語るように、宇佐美貴史、原口という仕掛けのスペシャリストが加え、スピードのある浅野が入って縦に速くなったと言っても、組み立てから急ぎすぎたことで、UAEとしてもボール保持者に対して人数をかけやすかったという問題はあった。
シュートを決め切るという言葉を発するのは簡単だが、少なくともこの試合は相手のブロックが入っていたり、球際で足が出て来るシーンが多かった。宇佐美はブロックに阻まれた場面に関して「そこで相手を外して打つとかできれば良かった」と振り返るが、その前の段階としてのチームとしての揺さぶりが不足していたことも問題として考えるべきだ。
そもそもUAE戦は最終予選の初戦ということで、二次予選のシンガポール戦ともまた違う独特の空気はあっただろうし、アジアカップの因縁の相手でもあったUAEが危険なチームであることを全体が共有して臨んだことが、いい方にも悪い方にも出たと言えるかもしれない。
こういう場を選手たちが踏んだことは今後に活かしてほしいが、戦い方としては一度、自分たちが本来やろうとしているベースに立ち返って、そこにタイのスカウティングを盛り込んでいくというプロセスが求められる。
タイはサウジアラビア戦を見ても決して侮れる相手ではないが、自陣に引くよりも中盤からプレッシャーをかけてくる傾向が強く、日本の特徴は発揮しやすい。移動や暑さといったディスアドバンテージはあるものの、プラスの面をしっかり出して、残りの試合に向けて良い仕切り直しとなるパフォーマンスを願いたい。
(取材・文:河治良幸)
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