日本対UAEを裁いたカタール国籍のアル・ジャシーム・アブドゥルラフマン主審【写真:ダン・オロウィッツ】
日本代表は1日、ロシアW杯アジア最終予選でUAEと対戦して1-2で敗れた。この試合では選手たちのプレーだけでなく、審判の判定にも注目が集まった。
特に後半、浅野拓磨のシュートがゴールラインを割っているにもかかわらずUAEのGKに掻き出されたことによって得点が認められなかったシーンは象徴的で、試合のハイライトのひとつとなっていた。
アル・ジャシーム・アブドゥルラフマン主審を始めとする審判団がUAEの隣国カタール国籍だったこともあり、議論を巻き起こしているが、中東圏の人々は一連の判定を“リベンジ”と考えているようだ。
事の発端は2年前に遡る。2014年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝2ndレグ、サウジアラビアのアル・ヒラルとオーストラリアのウェスタンシドニー・ワンダラーズの試合を裁いたのは日本人の西村雄一主審だった。
アジアチャンピオンを決める重要な一戦だが、この試合の前半45分のプレーが引き金となってしまった。アル・ヒラルのナワーフ・アル・アビドが、ウェスタンシドニーのアントニー・ゴレッチと交錯してペナルティエリア内に倒れる。
このプレーに対し西村主審はノーファウルの判定を下した。もちろんアル・ヒラル側は猛抗議したが、覆るはずもなく試合は進む。最終的に2ndレグはスコアレスドローに終わったが、1stレグで勝利していたウェスタンシドニーが2戦合計スコアで上回ってアジアチャンピオンに輝いた。
アル・アビドが倒れたシーンをリプレイ映像で改めて見直すと、ゴレッチの足はかかっておらずシミュレーションであることがわかる。西村主審の判断は正しかった。それでもこの試合を記憶に刻んだ中東圏の人々は、いまだに日本人審判のせいでアル・ヒラルが敗れたと思っているのだ。
その証拠か、ツイッター上で今月1日の日本戦でゴールを見逃したカタール人主審について言及したアカウントにはアラビア語で数多くのリプライが寄せられた。
メディアや個人を問わず、西村主審や日本戦を裁いたアブドゥルラフマン主審の画像などを添えて、「今こそアル・ヒラルの夢を殺した痛みを受けるときだ」「日本人が負うべき正義であり、運命だ」「我々は以前ACL決勝で同じことを経験した。日本も同じ報いを受ける」など、“リベンジ”を匂わせるツイートが送りつけられている。
アル・ヒラルはサウジアラビアのクラブであり、UAEと全く関係はないはずだが、中東圏は国籍よりも文化的つながりを重視する傾向があるため連帯意識が強い。今回の判定に関する見解もその影響を受けていると見られる。
日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「AFCとFIFAに抗議する」と明言したが、試合は終わってしまったため判定が覆ることはほとんど考えられない。AFCの権力の中枢は西アジアにあり、日本の主張がどこまで聞き入れられるかも不透明だ。今回の日本対UAEで起きた誤審が、日本と中東諸国との間に今後も遺恨を残してしまうかもしれない。
【了】