敗戦の深刻さはそれほど見受けられず
後半7分にUAEにPKを与えたシーン。長谷部誠(フランクフルト)が自陣ペナルティエリアすぐ外側でボールをさらわれて相手につながれた時、日本選手の対応がことごとく悪かった。
守備陣は中を固め、酒井高徳(HSV)や香川真司(ドルトムント)も徐々にエリア内に戻ってきたが、連携してボールを奪うのか、パスをカットするのかの守備の意思統一がハッキリしない。
挙句の果ては、大島、酒井宏樹(マルセイユ)と香川の3人がイスマイール・アルハマディ(15番)を囲んだが、いいようにドリブルされ、大島の足が出てくるのを待たれる格好になった。一連のプレーに「絶対にボールを奪う」「クリアする」という意気込みが感じられず、意思統一もなく1人ひとりが何となく人任せにしていた部分が見え隠れしていた。
1-2でタイムアップの笛が鳴った瞬間も、ピッチに倒れこんで祈りを捧げるUAEの選手たちとは対照的に、日本の面々はぶ然とするばかり。吉田麻也(サウサンプトン)や長谷部は判定の不満から主審に詰め寄ったものの、チーム全体に敗戦の深刻さはそこまで見受けられなかった。
もちろん6日に次戦・タイ戦(バンコク)があるから、選手たちは努めて前向きに振る舞っていたのだろうが、どこかで「1敗くらいしてもすぐに取り返せる」という楽観的な部分が垣間見えたのも確か。また、W杯を見据えた高いレベルの話は試合前から何度も出ていた。上を目指すのは当然必要なことだが、この試合に向かって足下が見えていない部分もあったのではないか。
本田は「勝負強さというのは、勝負に慣れているかいないか、厳しいことを経験してきたかどうかの積み重ねの集合体。日本選手がそこでUAEの選手に負けたという結果の表れ」と苦言を呈したが、日本がもはやアジアで頭抜けた存在ではないことを、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督、代表選手たち、彼らを取り巻く我々も今一度、再認識しなければならない。