「そんなものはジャーナリズムではありません」
田崎 山本さんは様々な分野のメディアと付き合いがあります。スポーツメディアは特殊だと思われますか。
山本 本当に取材を真面目にやっている人は頭が下がるほど真面目にやっています。私みたいに、フロントの奥でデータや揉め事をごそごそ扱っている人間さえも見つけて取材にきたりする。
ただ、話題となったものに即応しなきゃいけない、っていう時に、紙面を埋めるためにけっこう簡単に物事を作り上げちゃうという傾向はあります。調べきれてないうちに書いてしまった、っていうことが頻繁にあるように思えます。
――プロ野球で捏造が発生するのは主に人事についての記事ですか。
山本 野球の場合は特にそうですね。人事で面白い話があると、憶測が飛ぶのはある程度しょうがない。でもその憶測を憶測のまま書いたら、それは報道にはならない。
田崎 当然、ウラ取りはしないといけないですよね。
山本 ホットな話題ほど、急いで記事にしなくちゃいけないって話になって、込み入った取材はしていないんですよ。していないのに、囲み取材での発言内容から、憶測で膨らませて捏造していくわけです。そういう架空の素材で構成して埋めていく作業が、おそらく日本のスポーツジャーナリズムのなかで、横行してきたんだろうと。
田崎 そんなものはジャーナリズムではありませんね(苦笑)。
このあと、対談は具体例を挙げながら捏造記事が生まれる深層、スポーツメディアの問題点にさらに深く切り込んでいく。
(続きは『フットボール批評issue13』をご覧ください)