野球界でも選手談話が作られることも。球団への実害は?
田崎健太(たざき・けんた)/1968年3月13日京都市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て、1999年末に退社、ノンフィクション作家となる。著書に『W杯ビジネス30年戦争』(新潮社)、『楽天が巨人に勝つ日―スポーツビジネス下克上』(学研新書)、『ザ・キングファーザー』(カンゼン)、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)、『球童伊良部秀輝伝』(講談社)、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』『真説・長州力 1951-2015』(ともに集英社インターナショナル)などがある。最新刊は『電通とFIFA』(光文社新書)。早稲田大学スポーツ産業研究所招聘研究員。【写真:Raita Yamamoto】
山本 田崎さんは「フットボール批評issue12」で(編注:ワールドサッカーキングの)レアル・マドリーのジダン監督、ハメス・ロドリゲスのインタビュー記事がエアインタビューだと指摘されていました。
レアル・マドリーにとっての日本語メディアは、我々にとってのスペイン語メディアのようなものです。田崎さんのような方が広報担当者に確認してきてはじめて、問題が露顕したのではないでしょうか。
田崎 実際にはやっていないインタビューは球団にも実害が生じるものですか?
山本 直接はないです。ただ、どの球団も外国人選手を獲得するときに情報収集をしています。選手の動向をチェックしている中にエアインタビューが紛れていれば、その選手に対する判断を見誤ってしまう可能性があります。その意味ではイエスです。
田崎 ぼくが告発したエアインタビューは、「一問一答形式」を全て捏造していました。日本のスポーツ紙ではそこまでひどくなくても、言ってもいないことが「選手コメント」として出ていると選手が怒ることがありますよね。
現在、阪神の監督を務めている金本(知憲)さんは選手時代、スポーツ新聞が嘘ばかり書くので一切口を開かないという時期があったと本人から聞いたことがあります。
山本 (苦笑いしながら)それは野球界にはいっぱいあります。もちろん、フロント側としてはその記事がひどい場合は内容証明を送ったり、直接記者に電話を入れて抗議することもあります。世間の注目を浴びるような関心が高いトピックスに対し、メディアとして紙面を埋めなきゃいけない時に、「エア取材」、つまり選手の談話が作られてしまう。
それを考えれば、球団の監視のない、欧州クラブの選手や監督のエアインタビューが出ることはありえることでしょうね。ただ、本当に恐ろしいことだとは思います。ないものをでっちあげされるわけですから。