ジーコ監督が明言していた選手の「序列」
ブラジルの2トップはポストプレーヤーとスピードのあるセカンドトップの組み合わせが代表的だが、とくにこれと決まっているわけではない。柳沢敦、高原直泰、久保竜彦、大黒将志、玉田圭司、大久保嘉人など多彩なFWが起用された。
ブラジル式4-4-2の特徴は、GK以外すべてのポジションが対になっていることだ。CB、SB、ボランチ、攻撃的MF、FWのすべてが対。主に対になっている同士でバランスをとれば、自然に全体のバランスが保たれる仕組みである。いわゆる「つるべの動き」が強調されるのはそのためだ。
戦術的な縛りは少なく大雑把で、細部は選手同士の話し合いで積み上げていく。チームの進化は細部の詰めと連係の構築にかかっているので、メンバーの固定化は避けられない。ジーコ監督は「序列」を明言していた。
システムや戦術によってチームが進化すると考えるのは幻想である。例えば、正しいポジションをとってもパスがつながるとはかぎらない。そこには必ずタイミングが介在するからだ。ジャストなタイミングでパスをつないでいくには、その前提として卓越したボールコントロール、パスの精度、受け手がマークを外した瞬間を見逃さない眼が必要になる。
そうした個人技術、個人戦術なしに、何をどう積み上げたところで砂上の楼閣にすぎない。まず優れた個人を集める、そして組み合わせる、細部は当事者で詰める……その繰り返しによって連係が深まり、チームとしても進歩する。ジーコのチーム作りは王道といっていいかもしれない。ただ、それはいわばチャンピオンチームのやり方ともいえる。
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