トルシエと正反対の方針を採ったジーコ
2002年ワールドカップ後、フィリップ・トルシエ監督の後任としてジーコ監督が就任した。いわずと知れた世界のスーパースターである。
ファルカン、オシム、ハリルホジッチも選手としての名声はあったが、ジーコとは比べられない。ただ、監督としての手腕は未知数だった。鹿島アントラーズで短期間指揮を執った経験はあったが、監督としてのキャリアはないも同然。とはいえ、日本代表に経験豊富で世界的に実績のある監督が就任したことはそれ以前にもない。
オフトはフロントやコーチの経験は豊富だったが監督だったことはなく、ファルカンはブラジル代表を率いたが短期間にすぎない。加茂、岡田には国際的な経験がなく、トルシエの実績はアフリカ限定だった。監督経験の有無は、協会にとってさほど大きな問題ではなかったのかもしれない。
ジーコ監督は前任のトルシエ監督とは正反対の方針を採った。チーム作りに関して、トルシエがトップダウン方式とするとジーコはボトムアップである。世界標準を目指して選手を鍛えるのではなく、選手の能力を信頼して個々の力を最大限発揮させようとした。今、そこにいる選手の力を引き出すことがジーコ監督の基本方針だった。
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