選択肢には「引退」もあった
――一般には、血をサラサラにする薬を日常的に服用する方もいますね。
「ワーファリンという薬。ただ、あれを飲んでいるとサッカーができないんですよ。打撲やねん挫をしたときに内出血がドバッと広がり、頭を切ったらプシューッと吹き出てしまう。鼻血も止まらない。服用している限り、血栓はできませんが、サッカーはあきらめることになる」
――う~ん、困った。
「チームドクターが示した選択肢のなかには、薬を飲み続けるために選手を引退する案もありました。身体にはそれが一番いいよと」
――もう一回、邪魔くさい血栓を溶かし、そこから策を講じるというのは?
「それも考えたんですが、あいにく2回目は点滴を打っても血栓が固まってて溶けてくれなかったんです」
――参ったな。血栓のこんちくしょうめ。
「さて、どうするかと、セカンド、サードオピニオンを求め、東京や北海道の病院を訪ねました。そこで、豊富な症例を診ている有名な先生が『大丈夫だよ。完全に固まって血管にくっついているから飛ぶ心配はない』と断言してくれて」
――えっ、そんなのアリ?
「人間の身体って、ほんと不思議。一部が狭くなると、ほかにバイパスの役割を果たそうとする血管が自然に出来てくる」
――こっちで腕に血を送ってやるから任せろと。
「僕の場合は、脇の下の血管が太くなっています。だから問題ない」
――では、問題のあった血管は詰まりっぱ?
「はい。(鎖骨を触りながら)いまもここにいます」
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