いつ危険な状態になってもおかしくなかった
――では、プロとして生きていくうえでの気構え、生活面への影響は? J1・J2・JFL通算564試合に出場した鉄人、服部年宏さん(磐田強化部長)が現役時代を振り返って話していたんですよ。「現役を長く続けられたのは若い頃に病気(腹膜炎)をしたおかげだね。それまでは身体は動くし、代表にも入ってるし問題ないでしょと、カップ焼きそばとかインスタント食品を含めて好きなものを好きなだけ飲み食いしていた。病気をきっかけに栄養士さんの話をまじめに聞き、食生活を全面的に見直した」と。
「病気になって初めて気づいたこと、考え方が変化した部分はあります、サッカーができることの幸せはもちろん、普通に生活できること、生きていることのありがたみは、なってみなければわからなかった。最初に血栓が見つかったときは、『即入院してください。いつ危険な状態になってもおかしくない』と医師の方に言われましたから」
――不勉強ですみません。ページェット・シュレッター症候群は、そんなに危ない病気なんですか?
「血栓症というのは、簡単に言うと血の塊が血管を詰まらせているもの。最初はやわらかい状態なんですよ。それが血管にふらふらいて、何かのはずみで脳や心臓に飛ぶと、脳梗塞や心筋梗塞を発症する。そういう病気です」
――それは危険だ。エコノミー症候群と似てる。
「いくつか種類があって、エコノミー症候群は飛行機に乗ると体質的に血の塊ができやすいというものですね。僕の場合、さまざまな検査の結果、エコノミー症候群のような体質ではなく、遺伝でもない。原因が判然としませんでした。強いて言えば、左の鎖骨が狭く、血管が圧迫されて引き起こされたのではないかと」
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