「結果」が一番の収穫で唯一の収穫
30分を過ぎる頃には、マインツのプレッシングとショートカウンターにてこずる。25分にはフライにミドルを打たれ、ビュルキが左手一本で辛うじて防いでいた。後半に入り、55分にもカウンターから最後はフライにシュートまで持ち込まれている。ドルトムントは全体が間延びし、危ない場面が目につくようになった。暑さの影響で、時間が経つにつれてゲームの展開は苦しくなる。オーバメヤンが先制点を挙げたことは、やはり重要だったのだ。
香川は「今日は本当に納得のいくプレーではない」と振り返る。前半はシュールレとの2シャドーで、後半はカストロと並ぶ左のインサイドハーフでプレーした。「要所要所をしっかりとプレーをすることを意識しました」と言うように、厳しい暑さの中、香川は慎重に丁寧にパスを繋ぐ。
しかし本人も認めるように、そのプレーは、どこかダイナミズムに欠けるものとなった。アシストやゴールといった、目に見える結果を残すことはできなかった。
もっとも、躍動感に欠けたのは香川だけではない。ドルトムントのチーム全体がそうだった。メンバーが大幅に入れ替わったこともあるが、不慣れな気候の下、去年の開幕戦でボルシアMGを圧倒したような、BVBらしい縦に圧倒するサッカーは鳴りを潜めた。
「苦しかったけど、とりあえず勝つことができて、本当にそれが一番の収穫です」
香川は、今日のBVBの偽らざる本音を代弁したと言えるだろう。89分には シュールレが獲得したPKを、オーバメヤンが決める。2-0。
そして、後半アディショナルタイムの武藤嘉紀の追撃を振り切り、ドルトムントは開幕戦を2-1で勝利した。
内容云々ではなく、勝ち切ったこと。勝ち点3が、開幕戦で「一番の収穫」であり、唯一の収穫だった。
(取材・文:本田千尋【ドルトムント】)
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