課題が残る先制後の試合運び
未勝利が続いていた磐田にとっては『勝つこと』が重要だった。試合前、ボランチの宮崎智彦は「まずは勝って自分たちのメンタルを取り戻したい。福岡だからとかではなく、一回ここで勝って、チームを立て直していきたいという一戦でもある」と話している。
結果的に勝ち点3を上積みし、残留争いのライバルとの直接対決でまず1勝を掴むこともできた。とはいえ、諸手を挙げて喜べるような勝利だったのか。そこには疑問が残る。
ここからはJ1残留へシビアな戦いが続くため、3ポイントの重要性がより鮮明になるのは間違いない。だが、磐田は福岡に圧勝したわけではなく、一度は逆転を許してしまっている。すぐに追いつき、勢いそのままに試合をひっくり返せたことはポジティブに捉えていいだろう。その反発力、勝利への執念は確かに称賛に値するかもしれない。しかし、綱渡りのゲームだったことを決して忘れてはならない。
今回も先制した後の試合運びに課題を残した。特に磐田の右サイドは福岡にいいように使われた。複数人の連動したパス交換に翻弄され、次第についていけなくなり、どんどん疲弊していった。
福岡の為田大貴は守備を“サボる”ように高い位置で浮遊していた。ここでいう“サボる”とは怠慢という意味ではない。なぜなら、攻撃に移った時に最も脅威となったのはこの背番号13だったからだ。
井原正巳監督がどのようなアドバイスを送っていたかはわからないが、彼が攻め残りし、その突破力をピッチ上で表現したことで磐田の右サイドはズタズタに切り裂かれた。ほぼ無力化させられたといっても過言ではない。余裕がなくなったのか、ボールウォッチャーになる場面も少なくなかった。
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