正真正銘のスペクタクル
セビージャの「14番」は、モンチSDの構想による珍しい国からの新加入選手、という存在から、短期間のうちにチームに欠かせない歯車のひとつとなった。「キヨ」と呼ばれるようになった彼は、その立場を勝ち取るために逆風の中を進んでこなければならなかった。
練習を開始してすぐに筋肉を痛めてしまい、チームのオーランド遠征には参加できず。当初メディカルスタッフは回復に6週間を要すると見ていたが、清武は足を止めようとはしなかった。日本に一時帰国し、負傷から3週間後にはもう戦う準備ができていた。
セビージャはひたすらに相手エリアへ向かおうとする姿勢でエスパニョールとの試合をスタートさせた。清武はボールを受けるたびに難しいことを簡単に処理してみせた。物事を難しくしようとはせず、常に良い場所に位置していた。「キヨ、いいじゃないか!」と観客席からは聞こえてきた。
つい最近まで全く知られていなかった選手は、セビージャファンの新たなアイドルになろうとしている。存在感があり、攻撃の起点となるクオリティがあり、インテリジェンスがあり、優れた才能がある。そこに“ムド”・バスケスの手が加わり、サラビアの爆発力やビトロの成熟したプレーも足し合わせれば、生まれるものは正真正銘のスペクタクルだ。
フットボールとゴールが約束される。セビージャは今季のリーガを盛り上げることになりそうだ。エスパニョール戦で手に入れた勝ち点3は、仮にスコアが1‐0であったとしても同じものだが、攻撃サッカーを楽しめることが嫌いな者はいないだろう。火力は抜群だ。
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