アジアカップ制覇後、フランス戦での挫折
アジアカップに圧勝した後、「ここから一気に加速する」とトルシエ監督は話していたが、フランスとの親善試合で0-5と大敗を喫して出鼻を挫かれた。直後のスペイン戦では、いきなりラインを大きく下げている。ヨーロッパが経験した数年分を1試合で体感したので皮肉な言い方をすれば戦術的には「加速」した。
ただ、チーム作りとしては挫折である。スペイン戦で相手の監督から「バスを置いた」と揶揄された超守備戦法から、その後は持ち直してワールドカップに臨んでいる。
その間、何度かフランス戦に似たような試合があった。ラインコントロールの隙を狙われて失点したノルウェー戦があり、1トップ+2シャドーのホンジュラスには3バックの前面を浸食されている。ホンジュラス戦直後の会見でトルシエ監督は「1対1で勝たなければいけない」と話したが、これは自身の「3対7でも守りきれる」と豪語した以前の発言と矛盾している。
数的不利でも組織で守りきれるはずが、結局は「1対1」で勝たなければダメだと言っていた。ある意味、どちらも本当である。サッカーは1対1があり、組織がある。個と組織は両輪。ただ、キャッチアップに必死だった日本はヨーロッパであったような試行錯誤を経ておらず、トルシエ監督の指導方法も疑義を挟ませない結論ありきだった。組織最優先。そうでなければ2002年には間に合わなかっただろう。しかし、そのために“重み”を欠いていた。
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