3-5-2時にカギとなる前線の守備
機能している時は積極的にボール奪いに行くことができており、ショートカウンターなど攻撃の迫力にも繋がっている。夏場のこの時期でも磐田の選手は走り負けていないため、密なコミュニケーションと個々の意識で改善できるのではないか。
とはいえ、チーム全体が連動しなければボール奪取の状況は作れない。突き詰めなければならないのは、前線の選手によるパスコースの限定だろう。相手を追い込むことができず自由を与えてしまえば、高い最終ラインの裏にある広大なスペースを狙われてしまう。
守備陣が最初に考えなければならないのは、裏へのケアだ。出し手が自由ということは、パスの選択肢が豊富だということ。楔のパスや裏へのフィードなどの対応は確かにDFの仕事だが、その前の段階で出し手の選択肢を消すことは中盤より前の選手たちの役割だ。
2ndステージで磐田は、3バック+2トップの形を多用している。「デカ(森島康仁)、ジェイ、アダ(イウトン)と強い選手が前にいることでボールをキープする時間が長くなっていると思う」と、大井はこの布陣のポジティブな要素を口にするが、こうも話している。
「ただ、守備の時に前の2人がサボってしまうと一気に攻め込まれてしまうし、自分たちも守りづらくなってしまう。前線は行っているつもりなのかもしれないけど、行けていないシーンもある。
相手のサイドバックに出させるようなプレスでいいから、しっかりかけさせて、サイドで追い込んで角度を限定しつつ守っていければいいかなと。そういうのは2トップだからできると思うので、そこをサボらずにやれれば2トップのメリットと言えるのかなと」
戦い方を変えない以上、今後も磐田はハイラインで臨むことになる。チームの針路がはっきりしているからこそ、集団としての成熟度をさらに上げていくべきだろう。
ここから先は降格圏のチームとの直接対決も控える。ライバルと差をつけることができず、自分で自分の首を絞める形になったが、状況はむしろわかりやすい。勝つべき試合を必ずモノにすることで道を切り開くしかないのだ。「組織としての質を攻守ともに上げていく」と指揮官は話しているが、下位チームと激突する時にその真価が問われる。J1残留へ、単純かつシビアな戦いが始まる。
(取材・文:青木務)
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