FIFAとIOCの対立、発端は「オリンピック憲章」に
リオ・オリンピック開幕一週間前、日本サッカー界に衝撃的なニュースがもたらされた。オリンピック予選から不動のFWとして日本チームを出場権獲得に導いた久保裕也選手のリオへの派遣を、所属するクラブ、ヤングボーイズが拒否したのである。
クラブ側の拒否理由は、7月27日にウクライナで行なわれるチャンピオンズリーグ予選に久保を帯同させたいから、というもの。オリンピックが大好きな日本人の中には「オリンピック代表の名誉よりもCL予選をを優先させるのか?」と意外に思った人もいるだろう。
今回のリオ・オリンピックにでは、FIFAはサッカークラブに選手を派遣させるように強制しなかった。だから日本と対戦したスウェーデンは、オリンピック期間中に国内リーグ戦が継続していることを理由に、52名もの選手の招集を拒否した。日本に勝利したナイジェリアも、欧州クラブに所属する選手は招集拒否している。
欧州サッカークラブのオリンピック軽視の背景には、FIFA国際サッカー連盟とIOC国際オリンピック委員会との間で、一世紀近くにわたって続く対立がある。発端はオリンピック憲章にあった「アマチュア条項」だった。
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