順応しやすいチーム戦術。本田にチャンス到来の予感
その後も交代出場のチャンスは訪れなかったのだが、本田は後半24分からアップを命じられていた。「後半は疲れてしまった」と試合後にスソが言っていたように、中盤もウイングも疲労の色が濃くなっていた。途中交代で入ったアンドレア・ベルトラッチが故障し、急遽アンドレア・ポーリを入れるというアクシデントがなければ、最後のカードとして本田は投入されていたのかもしれない。
イタリアでは「勝ったチームをいじってはいけない」とよく言われるが、その不文律に沿えば次節のナポリ戦でも現在のメンバーがほぼ踏襲されるだろう。その試合でスソにゴールでもされたら、いよいよ本田にとって出場のチャンスは遠ざかるということになるかもしれない。
ただトリノ戦を見る限りにおいては、早晩本田にもチャンスは訪れるような気がした。スソのプレーには割と波があったのだ。プレシーズンの良かった試合と比較してボールタッチは少なめだったし、下がって守備をやるような場面で消えていたところもあった。
モンテッラ監督は終盤に攻め込まれたチーム全体の課題として「身体的な持久力だけではなくメンタルにも持久力というものがあるので、向上も図る必要がある」と語った。昨シーズンの中頃、本田が定位置を確保していた時は、調子を落とさずに戦術的なタスクを実行する安定感が評価されていた。戦術の吸収とともに、そういったものもアピールする必要があるだろう。もちろんゴール前での攻撃性を示しつつ、ということになるが。
4-4-2のサイドハーフへの順応を強いられた昨シーズンより、戦術自体は本田のプレースタイルに合っている。中へ絞ることも大いに認められているし、何より展開はショートパスによるポゼッションが主体だ。
右サイドで中へ絞り、チャンスに絡むことが要求される現在のポジションをこなせる人材は、今のところミランにおいてはスソと本田しか存在しない(なおモンテッラ監督によれば、新加入のホセ・ソサは中盤のインサイドMFとして起用する模様)。
経営譲渡を前に補強資金投入が制限される中、もしこのまま補強がなければシーズンをこのまま行く可能性もある。レギュラー選手ではない立場からの底上げを本田が率先して努めることができれば、それが彼自身の新たな運命も切り開くことにつながるのかもしれない。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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