五輪代表での成長。鹿島での飛躍
これまで欲してもなかなか手に入らなかった高さとパワーを、植田のポテンシャルに求めたいと指揮官は考えたのだろう。そして、植田自身もリオデジャネイロでの戦いを「集大成」にすえていた。
オリンピック切符に昨シーズンまではなかなか得られなかった「自信」という手土産を添えて、AFC・U-23アジア選手権が開催されたカタールから凱旋した今年1月にはこんな言葉を残してもいる。
「オリンピックだけじゃなくて、やっぱりA代表を目指さなきゃいけないと思っているので」
わずか2試合の出場にとどまった昨シーズンのセカンドステージから一転して、不動のレギュラーとしてアントラーズのファーストステージ優勝に貢献した今シーズンのファーストステージ。リーグ最少の10失点を誇る最終ラインに君臨しながら、植田は自分自身が変わっていくことに気がついていた。
「どの試合に出ても、余裕をもって前が見えていると自分でも思っている。やっぱり最終予選。あの試合を戦ってきたことで、余裕ができたのかなと思います」
大島と同じくキャップは獲得していないものの、植田もA代表に招集されたことがある。ハビエル・アギーレ前監督のもとで臨んだ、昨年1月のアジアカップ・オーストラリア大会。故障のDF内田篤人(シャルケ)に代わって抜擢されたが、植田自身は「あれは別です」と自身のA代表歴にはカウントしていない。
「ただ、A代表の先輩たちが真剣勝負を繰り広げている姿を間近で見ることができた点で、すごくいい経験にはなった。普段はどのような生活をしているのかもわかったので」
目指す場所が明確になった点で、準々決勝で敗退したアジアカップは、植田にとっては価値のあるものとなったのかもしれない。くしくもそのときの相手、UAEと対峙するアジア最終予選に臨む日本代表に、果たして誰が手倉森ジャパンから選ばれるのか。注目のメンバーは25日に発表される。
(取材・文:藤江直人)
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