「代表には半年は呼ばれない覚悟はしていました」
「宇佐美(貴史=アウクスブルク)も浅野拓磨(アーセナル)も、Jリーグで優勝してから出て行った。自分は最高でも4位、どうしても優勝したい気持ちが強い。J2優勝でも、カップ戦でもいいから、とにかくこのチームでタイトルを取りたい。
ドイツに行ってから、このチームに対しての思いがこんなにもあるのかと分かったし、セレッソのユニフォームを着る自分以外、全然想像できなかった」
山口をはじめC大阪の選手たちはチーム愛が強い。タイトルを獲らぬまま移籍した後悔はあったのだろう。とはいえ、日本代表のポジションを争う立場としては不利な状況にある。
「(C大阪に)戻ると決めた時、代表には半年は呼ばれない覚悟はしていました。去年は(ハリル)監督も就任1年目だし、自分もJ2・1年目だから呼ばれたけど、今はそう簡単ではない。だからまずJ1にしっかり上がって、代表に選ばれるようなプレーをして戻るのが一番いい。今は代表のことより、チームをどうにかしなくちゃいけないから。
どこにいても自分自身、意識を変えてやっていけば必ず成長できるはず。J2の方が絶対フィジカル的にはきついし、マイナスにはならへん。今のような、勝ったり負けたりしている状況を抜け出して、勝ち切っていくことができれば、チームも自分も、もう一段階上にいける。ここから連勝すれば再び自動昇格圏にだって上がれる。そう信じています」と山口蛍は率直な思いを切々と口にした。
C大阪は山口、柿谷曜一朗など一線級の選手を揃えるが、チーム状態は決して良いとはいえず、J1へ確実に復帰できる保証はない。だが、その可能性を高めるために、自ら率先してチーム状態を改善していくことしか、今の山口にできることはない。
日本代表として2年後のロシアW杯へ行く道を閉ざさないためにも、山口蛍にはメンタル・プレー両面で大きな変化が求められる。強引に周りを動かして、流れを変えるくらいの大胆なリーダーシップを示す必要がある。
代表を我慢してまでチームの昇格に注力し、その後代表復帰へ――。山口蛍は、悲壮な覚悟で厳しい道のりに挑もうとしている。
(取材・文:元川悦子)
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