4-4-2から3-5-2へ。システム変更で失った輝き
プレッシングはヨーロッパで生まれた戦法だ。パスをつないでくるチームには一定の効果がある。ところが、中盤をとばして後方から前線へロングボールを蹴り入れてくるアジア勢には効果がない。“世界”をキャッチアップしようと取り組んだ戦法だったが、あまりにもそれに特化しすぎたのだ。ヨーロッパの先端を見過ぎてアジアの泥沼にはまってしまった感があった。
加茂監督が導入したプレッシングには一定の効果があったとはいえ、それは極めて限定的だった。設定した長方形へ誘導し、相手がパスをつなごうとしていれば、ボールへ殺到して面白いように奪える。ただ、それを90分間継続するのは無理だった。
奪いきるか、苦し紛れに蹴らせて回収、この流れだけで90分間を押し切るのは無理な話で、バルセロナのように70パーセントぐらいポゼッションしているチームでなければ成立しない。プレッシングがハマらない場合の守備のほうが現実には多くなる。しかも、中盤で戦う気がないアジア勢に対してはプレッシングの機会すらない。
ロングボールを蹴るだけ、カウンターアタックだけの相手は、本来なら御しやすいはずだが、ロングボールを確実に断ち切れないのでラインが後退し、コンパクトな陣形は間延びしやすくなった。ロングボール対策のために当初の4-4-2は3-5-2へ変更。するとさらに間延びしやすくなり、「ゾーンプレス」は初期の輝きを失い、次第に看板倒れになっていった。
(文:西部謙司)
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