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コロンビア主将はギャングのヒーロー。危険地帯が生んだストライカーのバックボーン【リオ五輪サッカー】

リオ五輪サッカーで、日本代表は第2戦でコロンビア代表と戦う。キーマンの1人がストライカーのテオフィロ・グティエレスだ。異色の経歴を持つFWは、一般人が近づけないような危険な地域の出身。どのように育ったのか。現地に記者が潜入した。(取材・文:北澤豊雄)

text by 北澤豊雄 photo by Getty Images

ブラジルW杯日本戦にも出場していたストライカー

コロンビア代表のオーバーエイジ枠で五輪に参加しているテオフィロ・グティエレス
コロンビア代表のオーバーエイジ枠で五輪に参加しているテオフィロ・グティエレス【写真:Getty Images】

 コロンビアのリオ五輪メンバーの中に、野性味のある男がいる。オーバーエイジ枠で選ばれた31歳の点取り屋、テオフィロ・グティエレスだ。コロンビアに語学留学してこの国のフットボールに染まった筆者は、ブラジルW杯を控えた2014年5月の暑い日に、彼の実家を訪ねている。

 ポルトガルリーグのスポルティング・リスボンに所属するテオフィロの実績は、リオ五輪メンバーの中で存在感を放つ。コロンビアリーグとアルゼンチンリーグでそれぞれ得点王に輝いている。

 アルゼンチンリーグの名門リーベル・プレート時代の2014年シーズンはストライカーとしてチームを牽引し、リーグ優勝とコパ・リベルタドーレス(南米クラブ選手権)を制した。この年、南米のクラブでプレーする選手の中でもっとも活躍した人に贈られる南米年間最優秀選手賞を受賞。ブラジルW杯の日本戦で背番号9を背負っていたのも、テオフィロだった。

 本格的な欧州挑戦の舞台となった2015/2016シーズンのスポルティングではリーグ戦で11得点をマーク。惜しくも優勝は逃したものの、2位につけ、チャンピオンズリーグ(CL)への切符を手にしている。欧州でも着実に足跡を残しつつあるのだった。

 だが彼の故郷に足を踏み入れると、その華やかさは吹き飛んでしまう。

 カリブ海に面するコロンビア北部のバランキージャ市は、人口約190万人の工業の盛んな街である。日中の日射しは路面を焦がすのではないかと思うほど暑く、歩いているだけで体中から汗が噴き出てくる。

 首都ボゴタから高速バスでおよそ22時間。バスの発着所を降りて付け待ちのタクシーに乗り込み、テオフィロが育った「チニータ」(Chinita)地区の名を告げると、運転手は首を振って私の乗車を拒否した。治安のよくないエリアだから、行きたくないというのだ(注:今年4月にも路上に切断された首が落ちていたことを現地紙は伝えている)。

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