人懐っこいナポリ人の気質。マラドーナも「私の関係は終わらない」
その後もチロ・フェラーラにファビオ・カンナバーロなど、彼らが見出したスターはユベントスに取られ続けた(カンナバーロは直接ユーベに行ったわけではなかったが)。もちろんユベントスも勝つ為に補強をしているわけであり、移籍した選手たちだってプロとしての選択を“裏切り”と理解されるのはたまらないだろう。
とはいえどんなに頑張ってもユベントスの、いや北のクラブの後塵を浴びなければならないのかという複雑な感情が、ファンの中にはある。それもまた、イタリアサッカーの文化的な側面である。
そんな中でマラドーナの時代はユーベに優位に立つことができた数少ない例外であり、だからこそ彼はナポリで神格化されているのである。1日、サン・パオロでは新チームのお披露目とクラブ創立90周年のセレモニーが行われたが、そこにマラドーナがビデオメッセージを寄せた。「イグアインとは終わったが、私との関係は終わることはない。会長と全てのナポリの皆さんにキッスを」。スタジアムは湧いた。
人懐っこいナポリの人たちはイグアインのことを深く愛しており、ナポリに取材に行けば街の至る所で彼の写真や肖像を見ることができた。正直なところ、スクデットを取ってファンがイグアインとともに喜ぶ姿も見てみたかった気はするが…。
ともかく9000万ユーロ以上という金が動いたのは、イタリアではかつてなかったことだ。近年のナポリは移籍金収入を使って強化に成功していたから、それを元手にチームが強くなることも起こりうるだろう。
ただセリエAでコンスタントに高い興行収入を上げられるのはユベントスだけで、今夏の補強でも彼らが突出している。イグアインの移籍はリーグ移籍市場の活性化どころか、逆のムードを引き込みそうな気がしてならない。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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