首都東京が故の難しさ。身の丈以上の期待
ただ、その場合、原点の部活サッカーから再出発することになるので、篠田監督自身には継続性があってもチーム戦術的には継続性が薄れるはずだ。もし、戦術は監督によって幾分変わるもので、継続するのは主に戦術以前の取り組む姿勢や気風――鹿島アントラーズのジーコイズムに相当するもの――という考え方をクラブが持っているのだとしたら、それはあらためてアナウンスしたほうがいいと思う。
加えて言うなら、せっかく首都東京にあるのだから、実力よりも人気先行のクラブをめざしてもいいと思う。いまの東京はリーグ優勝への強迫観念でがんじがらめになっている面がある。
順位は、ACLをぎりぎり回避する5位や6位でも、常にスター選手が在籍していて観客動員が3万人から4万人。そして数年に一回は、棚ぼた? によってリーグ優勝が転がり込んできてしまう。あるいは、優勝できなくてもACL常連で、リーグ戦の前半は中位でもACLはなぜか快進撃で決勝進出。そのほうが、眉間にしわを寄せて「優勝、優勝」と唱えるよりも、東京らしいのではないかとも思う。
失敗の本質は、いままでできなかったことに挑戦しようという背伸びにある。そしてそれは、東京都という環境が生み出しているとも言える。実体が清貧をよしとするような堅実なクラブチームであったとしても、身の丈以上に多くのファンが付き、身の丈以上にいい選手がやってきて、その人々にふさわしい強さを求められる。ホームタウンを東京都に置いている以上、次の段階へのトライをせざるをえず、それが失敗に終わったとしても、失敗の原因を追求し、再びトライしなくてはいけない立場に東京はある。
今シーズンの低迷は、直接的には監督交替が引き金になっている。それを反省材料とするならば、次は確実に勝てる海外の監督を雇うか、それができないのならできないなりの純国産体制づくりをするか、いずれかの準備をしたうえで“頂戦”を掲げたいところだ。失敗をおそれずに。
(取材・文:後藤勝)
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