「東京のサッカー」を構築してはどうか
移籍金ビジネスについて触れると、長友佑都の移籍金が焦げ付いているではないかとの指摘がありそうだが、関係者によれば、既に全額回収できている。しかも追加で違約金が発生するので、当初想定していたよりも実入りは大きいという。
資金力に乏しい東京が「育てて売る」サイクルでクラブを維持せざるをえないのであれば、もともと外国籍選手や監督の扱いが得意ではないのだから、いっそのこと選手も監督も日本人のみの編成で戦いぬくのも手だ。ルーカスやジャーンのように日本語を解し、日本社会になじもうと努力できて、かつ能力が高いブラジル人選手など、そう見つかるものではない。
たとえば、篠田善之監督率いる現在のチームから、これが東京のサッカーだという構築作業をあらためて始めてみてはどうだろうか。J1リーグセカンドステージ第6節対アルビレックス新潟戦で篠田監督が見せた4-2-3-1の蹴って走るサッカーは、大熊清監督時代や原博実監督時代のタテへの速攻を重視したサッカーにも似て、FC東京ファンの好みに合うものだった。新潟に勝った翌週も、篠田監督は、速さ、強度、ダイナミックさを重視して練習に取り組んでいる。
余談だが、篠田監督は「俺のなかの大声選手権で大熊さんに勝った」と言っている。アビスパ福岡時代、天皇杯で大熊監督(当時)率いるFC東京と対戦。敗れたものの、試合後に挨拶すると大熊監督の声はかすれていた。その時点でも元気な自分の声と比較し、心のなかで「勝った」と確信したのだと言う。このような篠田監督のパーソナリティが東京ファンになじみやすいものであるとはまちがいない。
この戦い方は、大金直樹社長が7月26日付でファン、サポーターに送った手紙にある「原点である、全員攻撃・全員守備、そしてひたむきに最後まで諦めないという『FC東京らしさ』」という文言にも合致する。ポポヴィッチ監督、フィッカデンティ監督、城福監督のもとで、それぞれのいいところもよくないところも見てきた篠田監督のサッカーをベースに、より質を高めていく方向での進化を図ってもよいのではないか。