ビッグサム、代表監督は「究極の夢」
結果として、テクニカル・ディレクターのダン・アシュワースは自身がまとめた「イングランドDNA」論を棚上げにし、マーティン・グレンCEOは「国際大会で代表を応援する喜びを取り戻したい」と言って、新監督との2年契約を正当化するに至っている。
当のアラーダイスは大喜びだ。06年の監督交代時にスティーブ・マクラーレンの次点に終わってから10年、ついに「究極の夢」と語る代表監督の職に就いたのだ。その間、指揮官としての持ち味は全く変わっていない。W杯予選では、格下に囲まれているグループでも手堅くポイントを重ねる戦い方を貫くだろう。
本大会ではカウンターを主体にしぶとく勝ち上がろうとするに違いない。そのチームでストーンズやバークリーらが、リスクを嫌う指揮官にどの程度使われるかは気掛かりだが、トーナメント向きではあるかもしれない。
もっとも、内容に目を瞑る分だけFAと国民による結果の要求レベルは高い。最低線はベスト4。グレンCEOの言う「喜び」は、ロシアで66年以来となるW杯優勝が実現しない限り感じられないようにも思える。
FAが代表のサッカーそのものに覚える喜びをも取り戻すための復興プランを捨てたイングランド。国民は、就任に際して「代表が結果を残す時が来た」と断言した「成果主義監督」の腕前を見守るしかない。
(取材・文:山中忍【ロンドン】)
【了】