「引いて守ってカウンター」というサッカーでは勝てない時代に
意外かもしれませんが、私は日本人の国民性、身体能力からして(2)と(1)を併用する守備、つまりは受け身の「待つ」守備をプレーモデルに置くことは難しいという持論です。少なくとも国際大会で世界トップレベルの相手と戦う時に「耐えろ」、「飛び込むな」という受け身の守備を選択してしまうと、このブラジル戦のようにプレスが皆無で縦パスを自由に入れられ、ターンで前を向かれて簡単に突破、フィニッシュまで持って行かれ、結果的にごく当たり前に負けるのが目に見えていますし、その傾向は近年の守備戦術レベルの向上により強まっています。
その意味では後半から投入された浅野拓磨は攻守のプレーにインテンシティの高さがあり、「まずはオレが行く」という意識で前線からガツガツとプレスに行ってくれるのでこのブラジル戦で唯一可能性を感じた日本人選手でした。厳しい言い方にはなりますが、欧州では育成年代であっても何となく「引いて守ってカウンター」というサッカーでは勝てない時代になっています。
「耐えて勝つ」というキーワードを掲げるのであれば格上とのゲームほど、ゾーン3での(1)の守備を上手く併用していく必要があります。ブラジル戦の序盤は相手がGKへバックパスをした時に組織的プレッシングをはめにいく雰囲気が出ていたのですが、再現性はなかったのでチームとしてプランニングされた守備になっていなかったと私は解釈しました。
攻撃においても何度か前線で興梠が受け、ゾーン3でボールを保持するシーンがあったのですがそこで全体のラインを押し上げ、ボールを失ったとしてもそのままゾーン3で守備を行うような戦術は見えませんでした。もはや待つだけの守備では世界では戦えませんし、EURO2016のイタリアやドイツを見ても代表レベルでさえ複数の組織的プレッシングの併用とゾーン3での守備を実行しています。
アジアレベルでは何となく引いて守ってぼかしていれば、ミスが起きたり、失点まで至らないゲームになるのかもしれませんが、世界トップレベル相手に待つだけの守備は太刀打ちできません。そうした受け止め方が出来るのでれば、日本サッカーにとって「収穫になりえる試合」であったと私は見ています。
(文:坪井健太郎 構成:小澤一郎)
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