ベンチスタートとなった鹿島戦
もう一人、186cm、80kgと攻撃陣で最も大きなサイズを誇り、スロベニア代表としてワールドカップ南アフリカ大会にも出場したズラタン・リュビヤンキッチは、高さに加えて動き出しの質の高さで勝負する。
三者三様の特徴をもつストライカーのうち、興梠を欠いて臨んだファーストステージ覇者のアントラーズ戦。レッズを率いるミハイロ・ペドロヴィッチ監督は、先発にズラタンを指名する。
一方で李忠成には「ここでお前が頑張らないとダメだろう」と、そのプライドを刺激する言葉をかけている。果たして、モチベーションをますます高めて、李忠成は0-0で終わった前半の戦い見守っていた。
「暑くて選手のコンディションも落ちているなかで、途中から試合に入る選手がものすごく大事なものを占める。そのなかで自分が入ったときには、切れのいい動きとゴールへ向かう、ゴールを奪うという動きを丁寧に繰り返していけば必ず点を奪えると信じていました」
迎えた後半のキックオフ。ズラタンに代わって投入された李忠成へ、ピッチ上で攻撃を司るボランチの柏木陽介が耳打ちする。
「最終ラインの裏をどんどん狙ってほしい」
ホームということもあり、アントラーズは日本代表の昌子源とファン・ソッコで組むセンターバックを中心に、最終ラインを高い位置でキープ。全体をコンパクトに保ち、前線から激しくプレスをかけてきた。
李忠成が積極的に仕掛けることで、昌子とファン・ソッコも下がらざるを得なくなる。地味に映る作業ながら、アントラーズを少しでも縦に間延びさせておけば、いざチャンスになったときの見返りは大きい。
果たして、FW土居聖真のゴールでアントラーズが先制したわずか2分後の後半17分。右タッチライン際に生じたスペースへ柏木が抜け出し、MF梅崎司から縦パスが通った瞬間に李忠成にもスイッチが入る。
ニアサイドを目指してスプリントをかけながら、急加速して右斜め前方を走っていたファン・ソッコを追い抜く。コースを一度右へと旋回させ、ファン・ソッコの前方へ回り込んだ直後だった。