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「勇敢であることで、新しいものを生み出せる」。異端の監督、パコ・ヘメスの気高き魂【超攻撃的フットボールの美学】

圧倒的に予算の少ないクラブをリーガ1部に残留させ続け、なおかつ超攻撃的なフットボールを展開することで注目を集めたラージョ・バジェカーノとパコ・ヘメス監督。15-16シーズンには惜しくも2部降格となってしまったが、彼らが残した印象は計り知れない。16-17シーズンより、グラナダの指揮を執ることになったパコ・ヘメスだが、ラージョ時代のインタビューをお届けする【中編】。(取材・文:江間慎一郎/『欧州フットボール批評 special issue 01』より転載)

シリーズ:超攻撃的フットボールの美学 text by 江間慎一郎 photo by Getty Images

【前編はこちら】

「監督が最も視界の悪いところからフットボールを眺めている」

パコ・ヘメス
低予算のチームを率いながら超攻撃的フットボールを展開するパコ・ヘメス監督【写真:Getty Images】

――テクニカルエリア内でのあなたは常に動き回り、指示を送り続けています。あれだけ魅力的なフットボールを実践しているのに、そのプレーを楽しむ余裕は一切ないように見受けられます。

P たまにはあるよ。しかし本当に楽しめるのはテレビで見ているときだ。理由はいろいろあるが、何よりテクニカルエリアからプレーを把握することは難しい。奇妙ではあるが、監督が最も視界の悪いところからフットボールを眺めているんだ。

 テクニカルエリアでは角度が一切なく、何が起こっているか分からずにストレスだけが溜まる。ときには、ほぼ直感で指示を送っているよ。まあ、何百試合を戦ってきたことによる直感ではあるが、とにかくテクニカルエリアの視界は悪いとしか言いようがない。

 だからテレビで自チームのプレーを見て、『何だ! こんな良いプレーを見せていたのか!』とまったく違う感想を持ったことだってある。全然良くなかったと苛立ちながら家に帰り、テレビで初めて気付くことがね(笑)。映像では選手たちがどのように動き、どうマークを外しているかなどをはっきり確認できる。

――納得がいかないプレーを見せている選手を、前半の内に交代させることも多いですね。その後にテレビで振り返って、判断が間違っていたと思うこともあるのですか?

P もう何度もあるよ(笑)。だが監督は立て続けに決断を迫られる立場にあり、間違うのは当たり前だ。もちろん間違いが少ない程、良い監督と捉えられる向きも理解できるが、自分はそれに当てはまらない。監督は重圧にさらされながら毎分にわたって決定を下さなければならず、そのような状況で間違いを犯すのは普通だと思うよ。

 私の考えでは、フットボールの世界で最も間違いを犯しているのが監督だ。だが自分が決断するときには、チームのためにはそれ以外にないという確信を持っている。その後に「あのときの判断は……」と考えもするが、もう過ぎたことであり、違う結末を知ることはあり得ない。

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