バレンシア再構築に寄与する移籍劇か
またバレンシアにとっても、今回の移籍は渡りに船だった。現在バレンシアは再構築を迫られている最中で、経済的にそれほど余裕がない。そこで、経済状況を助けるためには選手の売却が必要であり、なおかつ新シーズンに向けて補強していく必要がある。
現在、FCバルセロナには、クリスティアン・テージョ、マルティン・モントーヤなど、バレンシアが補強したいポジションの選手が余っている。そこでFCバルセロナの望むアンドレ・ゴメスの移籍金を下げるかわりに、バルサから選手を提供して貰う―――それがローンになるのか完全移籍になるのかは、まだわかっていない―――と考えるのが妥当だろう。
そしてこういった交渉の裏に、主要なポルトガル人選手のほとんどを握っている、世界で最も有名な代理人、ジョルジュ・メンデスがいる。ロナウドの代理人でもあるメンデスから見れば、アンドレ・ゴメスがレアルに行っても、バルサに行っても、win-winであることに違いはないというからくりだ。
単純に見える国内クラブ間での移籍だが、その裏には、数々の選手のキャリアと将来への可能性、多くの思惑、そしてビッグマネーが密接に絡んでいる。移籍市場という名の水面下の戦いは、今後まだ一ヶ月続くが、既に16/17シーズンの戦いの火蓋は切って落とされているのだ。
(取材・文:山本美智子【バルセロナ】)
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