イニエスタ依存症からの漸次的脱却に向けて
その一番の理由は、監督が自分を望んでいるかどうかにあったのではないかと考える。監督のルイス・エンリケ及びバルサの強化担当チームは、数年かけてアンドレ・ゴメスを追っていた。その情報は、選手本人の耳にも入っていたはずだ。
バルセロナのキャプテン、アンドレス・イニエスタも32歳。攻撃の繋ぎ役としてのイニエスタ依存症から少しずつ脱却するために、なだらかな改革を進めていかなければならない状況にある。ラキティッチ一人だけに全てを任せるわけにはいかない。
一方、レアル・マドリーがアンドレ・ゴメスの獲得を狙っていたのは、ハメス・ロドリゲスが移籍することを前提に、その穴を埋めるためのものだった。だが、予想を覆し、ハメスはマドリードに残留すると断言。レアルはアンドレ・ゴメスの獲得に待ったをかけた。
またそれだけでなく、監督のジネディーヌ・ジダンは、同じポジションならゴメスより同胞であるポール・ポグバの獲得を望んでいた。マンチェスター・ユナイテッドに戻りたくないボグバは、ジダンからの電話を待ちこがれているが、結局、ジダンはハメスにラストチャンスを与える腹づもりのようだ。
アンドレ・ゴメスとしても、ビッグクラブ行きの列車を見逃したくはないし、自らのキャリアにとって、どちらの選択肢がより魅力的かは極めて明らかだろう。どんなに優れた選手でも、キャリアを決定づけるチャンスが、もう一度訪れるとは限らないのだ。
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