黒子としてチームを支えられる3人
オーバーエイジの人選が進められていく過程で、MF本田圭佑(ACミラン)やDF長友佑都(インテル・ミラノ)、FW岡崎慎司(レスター・シティ)の海外組に加えて、3年連続のJ1得点王に輝いたFW大久保嘉人(フロンターレ)らの名前が飛び交った。
ヨーロッパ自体が五輪に興味がないことも手伝い、海外組の招集はそもそも困難だったが、そうした事情以上に手倉森監督は、チームのなかに入ったときに与える影響を重視したはずだ。
表現は好ましくないかもしれないが、3人とも主役を張るよりは、黒子として所属チームを支えている存在だ。5シーズン連続で2桁ゴールをあげている興梠は、誰とでもコンビネーションを発揮できる柔軟さを併せ持ち、チームメイトのMF李忠成から「本当にやりやすい」と厚い信頼感を寄せられている。
もちろん、オーバーエイジには即戦力としての期待もかかる。A代表でのプレー経験がある3人が招集されたのも、決して偶然ではない。「あくまでも23歳以下の選手ありき」と公言してきた手倉森監督が、故障者などの状況を勘案しながら、既存のチームに足りない部分を補ってくれる存在としてラブコールを送って招集に結びつけた。
藤春はチーム唯一のレフティーとして左サイドからのチャンスメークに徹し、必要ならばセットプレーのキッカーを担うべく練習を積んできた。塩谷は本職のセンターバックに加えて、右サイドバックとボランチもこなせるユーティリティリー性でチームの助けになりたいと力を込める。
そして興梠は指揮官が望んできた「前線でボールを収められる存在」として、粘り強い守備から奪ったボールを最前線でキープし、カウンターの起点となるプレーを求められる。国内組では最もポストプレーに長けたFWだからこそ、ツートップは興梠が軸になってくるはずだ。
チームは日本時間の23日に、直前キャンプを張るブラジル北東部のアラカジュに入る。ピッチ外での相互理解を深めながら、同28日の地元クラブとの練習試合、同31日のブラジル五輪代表との国際親善試合を経てピッチ内における連携も確立。開会式に先駆けて同8月5日にキックオフを迎える、ナイジェリアとのグループリーグ初戦に臨む。
(取材・文:藤江直人)
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