「チームの雰囲気を壊さないようにやっていこう」
濃紺のスーツに身を包んだ男たちが、決意をみなぎらせた表情を浮かべながら日本を後にしていく。リオデジャネイロ五輪に臨む日本五輪代表が21日午前、羽田空港から決戦の地へ飛び立った。
経由地のロンドンでMF南野拓実(ザルツブルク)と、移籍が決まったアーセナルとの契約のために渡欧しているFW浅野拓磨が合流。UEFAチャンピオンズリーグ予選3回戦に出場するFW久保裕也(ヤングボーイズ)が合流する今月下旬をもって、招集された全18人が勢ぞろいする。
出発に先駆けて、19日からは千葉県内で短期合宿が行われている。コンディション調整を目的とした2日間で、オーバーエイジとして招集されたDF塩谷司(サンフレッチェ広島)、DF藤春廣輝(ガンバ大阪)、そしてFW興梠慎三(浦和レッズ)が23歳以下の選手たちと初めて顔を合わせた。
すでに6月中に五輪代表への招集が内定していたオーバーエイジの3人は、6月下旬に都内でメディカルチェックを受けた後に会食。初めて臨む国際大会となるリオデジャネイロ五輪へ士気を高め、チームをけん引していく誓いを立てるとともに、あることを確認している。
「チームの雰囲気を壊さないようにやっていこう」
日本サッカー協会から、塩谷と藤春の内定が発表されたのが6月14日。チームメイトたちから祝福されるなかで、藤春はMF今野泰幸からこんな言葉をかけられたという。
「先輩オーラみたいなものを出すとよくないぞ」
今野はFC東京に所属していた2004年、アテネ五輪に出場している。チームにはGK曽ヶ端準(鹿島アントラーズ)、MF小野伸二(当時フェイエノールト)の2人がオーバーエイジとして参戦している。
結果はグループBの最下位で敗退。パラグアイとイタリアに連敗を喫した時点で決勝トーナメントへの道が閉ざされ、ガーナとの最終戦で一矢を報いるのが精いっぱいだった。いまでも苦い記憶として残るアテネ五輪を反面教師として、今野がアドバイスを送ってくれたと藤春は振り返る。
「アテネのときはオーラがすごすぎて、絶対にその人らに合わさないかん、というのがあって。サッカーそのものも変わったと、今野さんは言っていたので」