試合の行方を左右する大胆な戦術変更が可能な『ウイクラ』
サッカーシミュレーションゲーム『ウイニングイレブン クラブマネージャー』(以下『ウイクラ』)は、こうした潮流を踏まえてデザインされている。チーム編成画面や試合画面左下隅のアイコンをクリックすると戦術設定5項目のアイコンが新たに表示され、その横には戦術オプション、セットプレー設定、フォーメーションの項目が並ぶ。
攻撃タイプはポゼッションかカウンターか、ビルドアップはロングパスかショートパスか、攻撃エリアは中央かサイドか、守備タイプはフォアチェックかリトリートか、プレッシングはアグレッシブかセーフティか。
戦術オプションはさらにマニアックだ。ポジショニングはフォーメーション重視か流動的か、サポート距離は近いか遠いか、攻撃人数は少ないか多いか、追い込みエリアは中央かサイドか、ディフェンスラインの高さは低いか高いか、コンパクトネスは広いか狭いか、守備人数は少ないか多いか、オフサイドトラップを狙うか狙わないか(OFFとON)。
これらの要素と試合中に操作できる攻守レベルとを組み合わせ、その効果を極大化、ピッチ上に大胆な変化をもたらそうという思考は、サッカー監督のそれとほとんど同じと言っていい。
たとえば前半は3トップ系のフォーメーションを採用、ポゼッション、ショートパス、攻撃エリア中央、フォアチェック、アグレッシブ、流動的、攻撃人数多い、ディフェンスライン高い……などを組み合わせると、前からプレッシャーをかけてボールを奪い、パスをつないで相手守備陣を崩し、ゴールを陥れる攻撃的な戦い方になる。
そして1点を奪ってリードしたら、4-4-2、カウンター、ロングパス、攻撃エリアサイド、リトリート、セーフティ、フォーメーション重視、攻撃人数少ない、ディフェンスライン低い……などを組み合わせた守備的なカウンター狙いで時間を使う、といった試合運びが、『ウイクラ』ならできる。
シーズンが進み、相手のレベルが上がると、★7クラスの高額選手を揃えていたからと言って、毎回大量得点で圧勝できるとはかぎらない。
1点を獲るのに苦労することもありうるし、そのリードを確実に守りきることも必要になってくる。
もし得点できなければ、0-0の引き分けを覚悟しつつ運がよければ1点を獲ろうというガマンをしなければならない。これは、まさに監督の追体験にほかならない。
前がかりに攻め、高い位置でボールを奪うハイラインハイプレッシャーの戦い方も可能
自陣にこもるとボールを奪う位置が低くなり、攻撃にかかる距離は必然的に長くなる
攻守レベルを超攻撃的にしてラインを高く設定すると、最終ラインのウラを衝かれることも
決定力の高い★7の選手にフィニッシュを任せたい。★6でも育て方次第で強くなる
戦術的観点、監督の立場からサッカーを再現する『ウイクラ』が秀でているのは、戦術が規定できるのは組織の動き方だけだと、あらためて認識させてくれる点にある。
相手のフィニッシャーと1対1の場面でセンターバックが止められるかどうか、ゴール前でセンターフォワードがシュートを枠内に入れられるかどうかは、その個の質にかかっている。決定機と被決定機だけは、戦術ではいかんともしがたいのだ。
決定機と被決定機の成功率を高めるために『ウイクラ』でできることは、PESコインを使ってできるだけいい選手をスカウトし、彼らをスペシャルトレーニングで鍛えること。ただ、これは、現実のサッカーでもまったく同じことだと言える。
市場評価額が低いわりにピンポイントで能力が優れている選手を獲ってくるなどの工夫も同様だ。あくまでもサッカーは選手がやるもので、監督、GM、社長や会長が関与できるのは、その選手をどう運用するかという範囲においてのみだ。
そしてその限界があるからこそ、監督は個の質に左右されない範囲の成功率を高めるべく戦術を追求する。
最後は選手に委ねなければいけないことを知りつつ、試合の90分間を戦術で制圧するという、現代サッカーにおけるリアルなおもしろさが『ウイクラ』には漂っている。
【了】