忘れてならない2ステージ制の議論
もちろん、選手獲得にリーグが加担することは公平性の欠如につながりかねない。妥当な線としては、放映権料を傾斜配分とし、その傾斜を大きくする。あるいは、リーグ戦の賞金額の大幅増か。優勝賞金が10~20億円ともなればビッグネーム獲得は十分可能だ。
スタジアム建設のサポートもない話ではない。Jリーグの課題の1つとして、スタジアムまでのアクセス環境の悪さがある。都市の中心部にスタジアムのある野球と比べると、見劣りしていると言わざるを得ない。
サンフレッチェ広島など新スタジアム建設の機運は高まっている。資金面でのサポートがあれば、さらに手をあげるクラブも増えるだろう。環境の整備はJリーグの魅力を向上させる一助となることは間違いない。
ただ、何より忘れてならないのは大会方式の再検討だ。村井満チェアマンも「大会方式の制約なしに、あるべき姿で議論を」と語っている。Jリーグは収入減に歯止めをかけることを理由に1ステージ制から2ステージ制へと変更した。従来の1ステージ制は世界では一般的な大会方式で、特殊な開催方法への変更にファンからは大きな批判が出た。
Jリーグのスキームとしては、ステージを分け、チャンピオンシップを設置することで1年に複数回の優勝争いを演出。そこで地上波露出を増加し、スポンサー収入につなげるものだった。
果たして、2ステージ制を続ける意義はあるだろうか。今回の巨額契約はJリーグが評価された何よりの証左である。そしてそのJリーグを支えてきたのは、長年応援してきたファンにほかならない。今一度ファンの声に耳を傾けてもいいのではないか。
巨額契約の使い道はJリーグの未来を左右しかねない重要な議題だ。しかし、ファンの反対意見を押し切って2ステージ制を始めたことを忘れてはならない。
(取材・文:植田路生)
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