ポジティブな勝点1をもたらした2つのポイント
そして、川崎Fも勝点1を分け合う格好になったが、前の2試合のように悔しさだけが残る内容ではなかった。勝ちに等しいという表現は正しくないかもしれないが、勝利してもおかしくない試合を展開しての勝点1獲得だったと言えるだろう。勝利の可能性すら感じさせたことは、今後への明るい材料となるだろう。
年間勝点で首位を走るチームと互角に戦えたのはなぜか。理由は大きく分けてふたつある。まず、川崎Fに中村憲剛がいなかったこと。そして、磐田が2トップで臨んだこと。ヤマハスタジアムのピッチ上には、前回対戦とは異なる光景が広がっていた。
試合直後には、両チームの監督による記者会見が行われる。まず試合を総括し、その後に 取材陣による質疑応答となる。広報担当者が記者に質問を促すのだが、ほんの少しでも時間が空くと名波監督は「OKね」とそのまま退室してしまうことがある。だが、この日は強豪・川崎Fを相手に好ゲームを展開したこともあってか、妙な“無の時間”ができることなく矢継ぎ早に質問が飛んだ。
筆者も3番目の質問者として、以下のような問いを指揮官に投げかけた。
――川崎Fの攻撃に入った時のスピード感は確かにあったが、中村憲剛選手がいない影響からか、作り直す場面もあった。それもあってスライドなどやりやすかった部分もあったのではないか。
これに対して名波監督はこう返答している。
「僕はいつも片手もしくは片手以上のゲームを見ますが、(川崎Fの)新潟戦に特化して2試合半くらい見た。憲剛がいないことでやはり“一発背後”というのは数少ない。前半に大島がサイドチェンジを一本入れたのが印象に残っているくらいで、あとは2列目を経由していく感じ。もしくは我々のミスを引っ掛けて出し入れの中で楔をスパンと入れる形が多かったと思う。これは新潟戦と同じだったので、中締め、縦ズレをよくやってくれたんじゃないかなと。それが、この内容に繋がったと思う」