美しくないが、タフだったポルトガル
ポルトガル。過去の栄光にしがみついて現実をなかなか直視できない国。
大航海時代に世界の覇権を握った遥か昔の栄華を持ち出すのはお決まりで、国民的スポーツであるサッカーもまたしかりである。25年前の自国開催でのワールドユース(現U-20W杯)二連覇が最大の語り草になってきた。
しかし、長らく国としての自己実現を経験していない“サウダーデ”(郷愁)に浸り切った最果ての小国は、EURO2016の優勝によって栄光と自信を取り戻したのである。
今大会、アウトサイダーばかりとの対戦にも関わらず、たった2勝(4分け)で決勝まで勝ち上がってきたポルトガルに圧倒的な強さは感じられなかった。しかし、勝負強かった。ひとつの敗北も喫しなかったし、真の意味で強豪国との初対戦となったフランスとの決勝では、終始劣勢で2倍となる18本のシュートを弾雨のように浴びながら勝ち切った。
かつて「黄金世代」と呼ばれたクラッキたちが奏でた美しく脆いパスサッカーの片鱗はどこにも残っていなかったが、最後まで見てくれの悪いタフなカウンターサッカーでアンリ・ドロネー杯を初戴冠した(編注:EUROの優勝トロフィーは欧州サッカー連盟(UEFA)の初代事務総長で、この大会の創設に尽力したフランス人アンリ・ドロネー氏に因んでいる)。
それでは、なぜポルトガルは優勝できたのか? その要因を4つのポイントにフォーカスしながら解析していこう。
【次ページ】その1:サントス監督による巧みなチーム改造