小規模クラブ・フロジノーネが掲げる中長期的な経営ビジョン
白熱した試合が続いたEURO2016はポルトガルの初優勝で幕を閉じ、欧州の各サッカークラブは新シーズンを見据えて動き出している。ただその中にはトップカテゴリーに残留できず、下部カテゴリーへの参戦に向けて準備しているクラブもある。2015/16シーズンのセリエA降格組はエラス・ヴェローナにカルピ、そしてフロジノーネの3組だ。
フロジノーネといえば、選手の市場評価額の合計はリーグ最低の約3200万ユーロ(約36億8000万円)で、ローマからユベントスに移籍したミラネム・ピャニッチ一人と同様の金額評価だ。戦力に限りがある中、彼らは勇敢にセリエAを戦い抜いた。
そんな彼らに地元のファンはサポートを忘れず、降格の決まった37節のサッスオーロ戦(ホーム)では満員のスタンドから溢れんばかりの拍手が送られた。
降格組には厳しい現実が待っている。参加のためのロイヤリティーやテレビ放映権料で大きな違いがあり、戦力の維持も難しい。1年での再昇格どころか残留さえ難しくなるクラブもあり、イタリアには経営難に耐え切れずアマクラブとしての再出発を余儀なくされるところも少なくない。
しかしフロジノーネは野心的だ。セリエAを戦うかたわらで育成部門に積極投資し、さらには新スタジアムの建設にも着工している。一部スタンドには単管パイプやメッシュシートを使うなど設営コストを抑えた上で、ユベントス・スタジアムなどのように収益を出せるクラブ専用サッカースタジアムとして運営するのだ。
今回、そのフロジノーネのマウリツィオ・スティルぺ会長から話を伺った。セリエA参戦でも浮足立たず、冷静に現実を見据えていたクラブのトップは、一方で中長期的なビジョンを抱いて虎視眈眈と設備投資もする。
伝統的に若手重視の戦略や下部組織の充実に力を入れ、今回のEURO2016で活躍したエデルを開花させたのもこのクラブだ。資金やファンの市場規模が限られた地方クラブがどう立ち回るのべきなのか、一つの例としてお読みいただきたい。