“ない”ことを確かめるという不毛な作業
エアインタビューがこれまで発覚しなかったのは、その証明が難しいからである。エアインタビューを告発するのは「悪魔の証明」に似ている。
悪魔の証明とは、訴訟に関して使われることが多い言い回しで、「~していないこと」あるいは「~が存在しないこと」という“不存在”を立証することを意味する。
監督や選手の取材にはクラブという公式窓口の他、複数のルートがある。架空取材であることを証明するためには、様々な可能性を潰していかねばならなかった。それは、まるで間抜けな墓堀人になったような気分だった。墓を1つずつ掘り返し、そこに“ない”ことを確かめるという不毛な作業を繰り返さなくてはならなかったのだ。
そして、もう1つ理由がある――。
エアインタビューに手を染めているのは、複数の出版社である。サッカーを生業にしているサッカーライターは、そうした出版社とは何らかの形で付き合いがあるものだ。エアインタビューを告発することは、自分の収入源となっている版元との関係を壊すことでもある。だから、多くのライターは、今回の件でも静観しているのだろう。
しかし、事は重大である。