冷酷なる“コールド・ワン”。マンUにやってきたモウリーニョ
慣例に従って呼ぶならば「コールド・ワン」。7月5日、マンチェスター・ユナイテッドの新監督として正式にスタートを切ったジョゼ・モウリーニョのことだ。
本来であれば、3年前に「ハッピー・ワン」を名乗って復帰したチェルシーでプレシーズンを迎えていたはずの大物監督が、昨年12月の解任が招いた転職に冷めているわけではない。
3年間で2度目のチャンピオンズリーグ(CL)圏外で昨季を終えたマンUで、個人的にも意識していないはずのない復活に懸ける熱意は、同日の就任会見から窺えた。「選手たちに、昨季以上だからと4位など目標にしてもらいたくはない」という発言だけでも、プレミア優勝を狙うと言っているようなものだ。モウリーニョは、優勝実現に向けて、妥協を許さず、情も挟まずに勝利を目指す「冷酷なる者」に徹する構えを見せた。
5月後半の3年契約締結から順調に進む戦力補強は、交渉責任者のエド・ウッドワードCEOに「言い訳は無用。何としてでもターゲットを射止めてもらいたい」とでも告げたかのよう。
「補強の核」と表現する対象4エリアのうち、最終ライン中央には1対1に強いエリック・ベイリー、2列目アウトサイドにはセンスとスタミナを併せ持つヘンリク・ムヒタリアン、前線中央には貫禄とマジックを誇るズラタン・イブラヒモビッチが早々に獲得された。その一方では、昨季の貢献度が低かったわけではない2列目要員のフアン・マタが、チェルシー時代の前回と同様に非情にも売却対象と目されている。
残る中盤中央は、ポール・ポグバ(ユベントス)、ブレーズ・マテュイディ(PSG)、ネマニャ・マティッチ(チェルシー)らが、まだターゲットの状態(本稿執筆時点)。だがモウリーニョは、「新戦力4人目も、8月末などではなく早めに手に入れる」と断言した。移籍市場での動きからして、出遅れが響いた3年前のデイビッド・モイーズ就任時と、明確な方向性を欠いたルイス・ファン・ハール前体制下とは一線を画している。