守備的なスタイルへの変化。南米のような戦いぶり
ユーロで優勝したポルトガルは4-4-2と4-3-3の2つのフォーメーションを使い分けていた。4-4-2のほうは中盤をダイヤモンド型に組んだ形である。
ポルトガルはオランダと並ぶウイングプレーヤーの宝庫なので3トップのイメージが強いが、菱形MFの4-4-2もある。ジョゼ・モウリーニョ監督下でCL優勝したときのFCポルトが4-4-2を使っていた。ベンフィカもよくこの形を使っていて、ポルトガルでは馴染みのあるフォーメーションなのだ。
ところが、同じ4-4-2でもユーロのポルトガルはグループステージとノックアウトステージでは全く違う戦い方をしていた。当初は高いボールポゼッションを軸にした攻撃的なプレースタイルだったが、途中から人選を代えて守備的なスタイルに変化しているのだ。
開催国フランスを破った決勝では、まるで南米のチームのようなプレーぶりだった。南米といってもブラジルやアルゼンチンの代表チームではなく、かつてトヨタカップで来日してヨーロッパ王者に勝利したり、互角の戦いをみせたリベルタドーレス杯王者のようなスタイルである。
情報量が圧倒的なヨーロッパ勢に比べると、南米勢はチームも選手もほとんど知られていなかった。ところが、いざ対戦してみると“無名”の南米クラブはのらりくらりとヨーロッパの攻勢をかわしながら、したたかな試合運びと鋭いカウンターアタックで対抗していた。
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